estwald2002のブログ

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映画「英国王のスピーチ」感想

  • 2010年、イギリス・オーストラリア
  • 監督:トム・フーパー
  • 主演:コリン・ファースジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーター、ガイ・ピアースデレク・ジャコビマイケル・ガンボンティモシー・スポール

  • あらすじ:
    20世紀初頭のイギリス。王ジョージ5世の次男ヨーク公は、幼い頃から吃音に悩んでいた。父王にスピーチを任されても失敗してばかり。妻エリザベスは、オーストラリア帰りの言語聴覚士ローグを夫に紹介する。王族と平民の格差を気にすることなく自分に接するローグに反発していたが、徐々に心を開き治療を受け入れていくヨーク公。だが、亡くなった父王の跡を継いだ兄エドワード8世が1年も経たずに王座から降りてしまったため、心ならずも「ジョージ6世」としてその後釜に就くこととなる。ナチス・ドイツの圧力が次第に強まる情勢下、国民の士気を高めるためのラジオ演説を、ジョージ6世は無事やり遂げることができるのか…。

  • 感想:
    この映画は史実に基づいた作品である。多くの人々が、自身が持つ欠点や障害に悩んでいる。ジョージ6世の場合はそれに加え、発明されたばかりのラジオで植民地を含むイギリス全土におのれの声を届けなければならない立場にあった。吃音の悩みは本当に深かっただろうと察する。特に、王たる務めをないがしろにして2回の離婚歴がある女性と本気で結婚しようとする兄王エドワード8世(イギリス国教会は離婚歴のある女性が王族と結婚することを認めていない)を諫めようとして吃音のため言い負かされてしまった時は、さぞかし悔しかったろうと思った。責任感が強い上に真面目なジョージ6世は、王位を継承した直後、妻エリザベスの前で「私は王ではない」と弱音を吐き、むせび泣く。エリザベスはそんな夫を優しく癒していた。
    そんな献身的なエリザベスが見つけてきた言語聴覚士のローグは、資格も免許もない、経験だけを頼りに数多くの患者を治療してきた風変わりな男。彼はジョージ6世と対等に接しようとし、当初は王の反発を買うが、独自のやり方で王の吃音を治す努力をし、1939年9月、ナチス・ドイツとの戦闘状態への突入を全イギリス国民に告げるラジオ放送の際にも、マイクを隔ててジョージ6世を支えるのであった。王は見事にやり遂げ、この映画は終わる。エンドクレジットによると、のちの戦争スピーチにおいてもローグは常に王に付いて支え、王はローグに「君主個人への奉仕によって授与される唯一の勲章」を与えている。そして生涯ふたりは良い友人であったという。
    吃音の治療として、下顎をぶるぶる動かしたり腹筋を使わせたり窓から大声を出させたりするのは大体想像がついたが、ローグのやり口はさらに、罵倒や卑猥な言葉を叫ばせたり、歌に合わせてしゃべらせたりとユニークだった。戴冠式のリハーサルで、ウエストミンスター寺院の王座にわざと座ってジョージ6世を怒らせて大声を出させるあたり、なかなか巧みだなと感じた。
    その戴冠式のニュース映画を一家で見ていて、ヒトラーの演説を「何を言ってるかは分からないがうまい」と言うジョージ6世。微笑ましくもヒヤッとするところである。なお、現イギリス女王エリザベス2世はジョージ6世の長女である。
    オリジナル音楽の他に、モーツァルトブラームスベートーヴェンの曲が流れるが、これらはロンドン交響楽団の演奏で、「さすがはイギリス、懐が深い」と思った。

    この作品は、第83回(2011年)アカデミー賞(作品賞・監督賞・主演男優賞・脚本賞)、第68回(2011年)ゴールデングローブ賞(最優秀主演男優賞)、第35回(2012年)日本アカデミー賞(外国作品賞)を受賞した。

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