estwald2002のブログ

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映画「シェルブールの雨傘」感想

  • 1964年、フランス
  • 監督:ジャック・ドゥミ
  • 音楽:ミシェル・ルグラン
  • 主演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ニーノ・カステルヌオーヴォ
  • あらすじ:
    1957年11月、フランスの港町シェルブール。そこには美しい17歳の少女ジュヌヴィエーヴと、彼女と将来結ばれる夢を見ている20歳の自動車工ギイがいた。ジュヌヴィエーヴの母は傘屋を営んでおり、ギイは病気がちの伯母と暮らしていた。ジュヌヴィエーヴの結婚について母は「まだ若すぎる」と反対しているが、ギイとジュヌヴィエーヴは「子供はきっと女の子、生まれたらフランソワーズと名付けよう」と上の空。ところがそんなところに、傘屋のもとに莫大な納税通知書が届く。肌身離さず付けていた大事なネックレスを売ろうとした母の前に、各地を飛び回る誠実な性格の宝石商カサールが現れる。彼のおかげで助かったジュヌヴィエーヴの母。そしてさらにそこへ、ギイの元にアルジェリア戦争への召集令状が届く。ギイは幼なじみのマドレーヌに伯母の世話を頼み、出立する。決して忘れない、手紙を書く、と涙ながらに別れるギイとジュヌヴィエーヴ。そして1958年1月、ジュヌヴィエーヴはギイの子供を身ごもっていた。しかし、ギイからの手紙はほんの数通しか届かない。不安な毎日を送っていたジュヌヴィエーヴの前にカサールが来る。彼は愛する妻を亡くし、商売のために世界中を行き来することで寂しさを紛らわせていたのだった。カサールは「もしその気になったら」とジュヌヴィエーヴに求婚して旅に出る。ギイからは「男ならフランソワ」と喜びの手紙が届くが、まだ帰郷の気配はない。まだ産まれぬ子供ともども愛してくれると言ったカサールに次第に心を開いていくジュヌヴィエーヴ。やがて二人は結婚、パリへ移住する。1959年3月、負傷したためやっとシェルブールに帰還したギイだが、傘屋は他人の手に渡っており、ジュヌヴィエーヴは結婚したと聞いて、仕事も自暴自棄になって辞め娼婦を買ったりする。病気がちだった伯母がその時亡くなった。マドレーヌに「仕事もしないあなたは嫌い」と言われ、心を入れ替えて伯母の遺産を使いガソリンスタンドを始めたギイ。そしてギイとマドレーヌは結婚する。1963年12月のある雪の日、マドレーヌと息子フランソワがクリスマスのプレゼントを買いに出かけた時に1台のクルマがギイのスタンドに止まる。それはジュヌヴィエーヴのクルマだった。清純な娘だった頃の面影は消え高級マダムとなっていた彼女を、ギイはひと目で見分ける。「娘はフランソワーズというの。会ってみる?」「いや、やめておこう」と短い会話を交わし、給油を終えたジュヌヴィエーヴのクルマは走り去る。入れ違いに帰宅したマドレーヌとフランソワをギイは喜びの顔で迎え、部屋の飾り付けをしよう、と明るく言うのだった。

  • 感想:
    これはミュージカル、いや踊りはないので現代風オペラとでも言える映画で、セリフは全て歌である。俳優の歌唱に後から合わせてプロの歌手が歌を付けているか、あるいは逆であろう。個人的に、同じフランス語のクラシック・オペラのドビュッシーペレアスとメリザンド」が私はとても好きなので、フランス語の歌の、特に発音のエレガントさにうっとりとした。テーマ曲も「ああこれはどこかで…」と聞き覚えのあるものだった。名曲なため何度もカバーされているらしい。音楽担当のミシェル・ルグランは2019年に亡くなったが、フランスのマクロン大統領は「フランスの最も偉大な音楽家のひとり」と哀悼の意を表した。
    それにしても、戦争が愛する二人の仲を引き裂くというのは割とありきたりな話ではあるが、身重のジュヌヴィエーヴを赤ん坊ごと受け入れるカサールはいささか紳士過ぎるものだ。宝石商で裕福なためだろうか、それとも妻との死別がよほど堪えていたのだろうか。ともあれ、彼と結ばれたおかげで経済的にはジュヌヴィエーヴは本当に見違えるほどに変わっていた。ジュヌヴィエーヴを演じていたカトリーヌ・ドヌーヴはこの時20歳。16歳の小娘から22歳のマダムまでを演じきっている。
    パステルカラーの街並みや、赤や水色で彩られた傘屋の内装がきれいでうっとりする。本当のシェルブールの再現ではなかろうし、ジャック・ドゥミ監督の美意識が反映されているものだろう。
    アルジェリア戦争について触れると長くなるが、フランスにとっては2度の世界大戦と同じくらい近代史における負の遺産と言える歴史である。一度フランス近代史の本を読んだが、読み返してみようと思っている。
    オープニングの傘、傘、傘。何と美しい始まり方だろう。
    ギイがジュヌヴィエーヴと別れ家族と和やかに暮らす光景に、いささかほっとさせられた。バッドエンドではなく、ビターエンドだと思う。
    この作品はカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞し、近年2Kリマスター版が製作されている。私はAmazon Prime Videoで見たが、高画質版でとても良かった。(残念ながら先日プライム会員特典から外れてしまったが。)

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