estwald2002のブログ

主に映像作品の感想文を書いていきます

映画「羅小黒戦記」感想

  • 2019年、中国
  • 原作・脚本・監督:MTJJ
  • 制作:北京寒木春華動画技術有限公司
  • 邦題:「羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来」(2020年公開)
  • 日本語吹き替え版配役:
    ・小黒(シャオヘイ)…花澤香菜
    ・無限(ムゲン)…宮野真守
    ・風息(フーシー)…櫻井孝宏
    ほか

  • あらすじ:
    緑深い森の中で平和に暮らしていた黒猫の妖精シャオヘイ。だが、ある日人間による開発の手が入り、そこを追いやられてしまう。村や街を放浪するシャオヘイを拾ったのは、木を操る妖精のフーシー。彼はシャオヘイを故郷によく似た島へ招待し、「ここに住まないか」と誘う。喜んだのもつかの間、人間でありながら最強の「執行人」(問題を起こした妖精を捕獲し連れて行く役目の者)と呼ばれるムゲンがフーシーを捕らえに現れ、戦いの中、シャオヘイはフーシー達とはぐれてしまった。
    ムゲンはいかだを作りシャオヘイを乗せ、大海原へ発つ。激しい反抗にも疲れてきた頃、シャオヘイはムゲンの「霊域」に招かれる。そして霊域は全ての生き物が持っていること、自分にムゲンと同じ金属の属性があることを知らされる。金属を扱う術を学ばないか、とムゲンに言われ、「うまくすれば逃げられるかも」と学び、たちまちその才能を開花させるシャオヘイ。
    とある海岸にたどり着いた二人は、陸路龍遊市を目指す。隙あらば逃げ出そうとするシャオヘイを、ムゲンはそのたび捕まえる。彼はシャオヘイを妖精達が平和に暮らし人間との共存を目指す拠点「館(やかた)」に連れて行きたかったのだった。そして彼はシャオヘイに「お前は『領界』を持っている」と教える。領界の中では全ての霊域を操ることができる神に等しい力が得られるという。また、シャオヘイは途中で出会った他の執行人から「フーシーは悪い奴ではないが人間を憎みすぎる」と聞かされる。初めて食べる人間の美味しい料理、バイクの旅、ホテル…。「フーシーは悪い奴じゃない! あんたもね…いい人でもないけどさ!」。
    一方、シャオヘイを取り戻したいフーシーは他の妖精を襲い「強奪」の能力でその力を奪い取っていた。そして仲間の協力を得て二人が龍遊市へ向かうことを察知し、先回りする。
    人口1,000万人、そして「決して人間には知られない」掟を守りつつ500人の妖精が住む大都市龍遊市。地下鉄に乗ろうとしたところでフーシーの仲間がシャオヘイを奪う。地下鉄車両の内と外での戦いはムゲンの勝利で簡単に決着が付き、そのまま館からの迎えを待つことにしたが、今度はフーシーが強奪した能力と仲間を携えて現れる。彼にシャオヘイをさらわれてしまったムゲンは他の執行人達に戦いの事後処理とフーシーの捜索を頼み、シャオヘイの行方を追って飛ぶ。
    再会を喜ぶシャオヘイに、フーシーは「ここには元々俺たちの住んでいた森があった」と語り始める。森と妖精が共存していたある日、人間が入り込んだ、木を倒し家を建て、神をあがめる弱い人間達とはいい思い出もあった、しかし開発が進み森はどんどん荒らされていった、多くの妖精達がここを去り、館は人間との共存を選んだが、出て行くべきなのは人間の方だ…と。「分からないけど、僕には何だか間違っている気がする。人間が嫌いならかかわるのを止めてあの島のような場所で暮らそう?」と答えるシャオヘイを拘束し、「人間は侵略と破壊ばかりだ、すまない、お前の力が必要なんだ」と言いつつ強奪の能力を使うフーシー。フーシーの目的はシャオヘイの領界だったのだ。
    駆けつけたムゲンによってシャオヘイは救われたが、領界を奪われたためその命は消えかかっていた。ショッピングモールの地下で領界を広げていくフーシーを止めようとムゲンが襲撃する。ふたりの戦いの最中に龍遊市中心部を飲み込むほど広がる半球状の黒い領界。その中で繰り広げられるムゲンとフーシーの死闘の行方は…。そしてシャオヘイの能力が覚醒する…!
  • 解説・感想:
    本作は、2011年からwebで公開されている連作短編アニメが元となっていて、当初はMTJJ監督のほぼ手弁当で制作されていた。現在bilibili動画にて番外編を含め50本ほどが公開されており、再生回数は3億回にのぼる。当然音声も字幕も中国語であるが、有志の日本語訳が付いたものがYouTubeで数本見られる。本作はその連作の4年前という設定で一から新しく作られたものである。
    まず、2019年9月に、中国での公開とほぼ同時に日本でも上映された。これは在日中国人向けのいわばビジネス的実験であって、申し訳程度の日本語字幕をつけてごく少数の映画館で始まったのだが、これを観た主にアニメ業界人がSNSを介し評判を広げ、次第に客席のほとんどを日本人が占めるようになった。1週間後の座席指定すら満席になったという話もある。その根強いヒットを基に日本のアニメ製作・配給会社が日本語吹き替え版を作り、2020年11月に全国132館で公開したのが「~ぼくが選ぶ未来」である。
    子供の姿にも化け物にも変身できる可愛らしい子猫の妖精「小黒(シャオヘイ)」の「小」とは「~ちゃん」程度の意味なので、日本語では「クロちゃん」という名前と思ってよかろう。(「羅」はweb版でシャオヘイを拾った少女の名字。)
    私は日本語吹き替え版の予告を観て興味を持ち、舞台挨拶付きの初日に観に行った。
    まず、映像クォリティが非常に高いことに驚いた。目が回りそうな激しい戦闘シーンだけでなく、日常的な何気ない動きの描き方がとても丁寧なのである。落下していくシャオヘイをムゲンが襟をつかんでキャッチし、パッパッと服の乱れを直してやる仕草など、とても微笑ましい。キャラクターはシンプルな線で描き、ほとんど影を付けない独特の画風、そして美しい背景、使うべきところに効果的に使用されている3DCG。実は現在世界的にはディズニーやピクサーを代表に(また中国も例に漏れず)3Dアニメが流行っているのだが、日本では相変わらず「君の名は。」「鬼滅の刃 無限列車編」「劇場版呪術廻戦0」など2Dアニメが大ヒットしている。それらと同じ2Dの土俵上にあり、絵的に全く遜色のない本作が中国で生まれたのは驚異だ。当然向こうの制作者はジブリ作品を始め日本アニメの大ファンで、それらが画風に影響を与えているのだろうと思うと、こちら側の日本アニメファンとしては感慨深い。これがたった50人ほどの、しかも美術学校を出たての人を含む若手ばかりで作られたと言うのだから、すごい。
    作画だけではない。ムゲンや、龍遊市で花の配達をする花の妖精に代表される「人間と妖精との共存」の思想には、おそらくアジア圏の多神教文化が色濃く反映されている。ナタという非常に強い執行人が終盤に登場するが、このキャラクターは中国ではフリー素材と言っていいほど一般化し民衆にあがめられている神が原型であることからしてそうであろうと考える。ムゲンとシャオヘイとの戦いに敗れたフーシーは、自らの姿を森に変えた。自然と人間は共存できるのか、それとも対立し一方が消滅するべきなのか、という普遍的でスケールの大きなテーマに対し、フーシーの最期を提示して一つの回答を破綻なく描いている。共存を選択したシャオヘイがムゲンに「フーシーは悪い人だったの?」と問うと、「お前の中にちゃんと答えがあるんだろ」と答えがある。そう、どちらも悪くない。私たちに必要なのは、互いを認め合うことなのだ。(森と化したフーシーは公園になった、との公式のコメントがある。)
    しかし、やはりフーシーの「死ねーっ!」は私にはダメだった。強い覚悟の表れとはいえ、それはシャオヘイに対しては言って欲しくなかった。最後に発した言葉「シャオヘイ、ごめん」には泣けるが。
    館には住まず別れを告げて去るムゲンにシャオヘイが「師匠! 僕、一緒にいてもいいですか!?」と叫ぶラストもいい。抱きつくシャオヘイをしっかり受け止めるムゲン。いい師弟関係になってくれることだろう。
    のんびりした田舎が続くかと思うと、ムゲンや妖精たちが人間同様スマホを活用していたり、地下鉄の構内に金属探知機が備わっていたりと、中国国内の風景が垣間見られるのも面白い。
    また、中国人のツボにははまるらしいギャグも我々には新鮮に見える。日本人が作ったら時代遅れと言われるものかもしれないが。
    中国語原語と日本人声優の吹き替えを聞き比べると、どちらも違和感なく合っていて素晴らしい。
    日本語字幕には、「初期字幕」と、日本人から分かりづらいと指摘され作り直された「通常字幕」と、日本語吹き替え版が公開された後にもう一度作られた「最新字幕」の3種類があり、バリアフリー日本語字幕と合わせて4種類の字幕が完全生産限定版Blu-rayには収められている。吹き替えとはニュアンスが微妙に違っており、見比べ聞き比べるのも一興である。
    MTJJ監督は「続編を制作中」と明言しているので、それを見られる日が来るのが楽しみだ。

  • 参考資料:
    ・完全生産限定版Blu-ray同梱ブックレット、縮刷版アフレコ台本
    ITmediaビジネスONLINE「異例のロングランヒット、中国アニメ『羅小黒戦記』の舞台裏に迫る」(2020年5月21日) 

    https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2005/22/news013.html
    ・同「『鋼の錬金術師』監督が語る、中国アニメ『羅小黒戦記』ロングランヒットの訳」(2020年5月22日) 

    https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2005/23/news004.html
    ・「羅小黒戦記」公式Twitter(@heicat_movie_jp)
     (中国の二十四節気に合わせて作画スタッフから可愛らしいイラストも投稿さ   れている)
    ・《非公式》羅小黒戦記FAN Wiki

    lxh-fan-wiki.site

     

    www.youtube.com

Koolertron 片手キーボードをMacで使うための手順(1)

 

はじめに~片手用キーボードをM1 Macにつなぐ

ゲーミングキーボードの中には、お絵描きの際に有用な片手キーボードがある。

かくいう僕も、Windowsマシンでお絵描きするためにこれを買った。

Koolertron 片手キーボード

https://www.amazon.co.jp/dp/B0963TVVN9/

 

しかし、使い慣れたWindowsマシンではついついいろいろなサイトを見て回って時間を浪費する誘惑に負けてしまうので、新しく買ったM1 MacBook AirにHUIONの液タブを付け替えてお絵描きすることにした。

M1 MacBook AirとHUION液タブ 左はWindowsマシンのサブモニタ


Koolertronキーボードの設定画面。(Windows

キーマッピングソフト「amag」の画面(Windows

Windowsマシンでキーマッピングの設定をしてキーボード本体に記憶させるのもいいらしいが、設定のバックアップをMacにも分散して保存しておきたい。
ここはひとつ、M1 Macでやってみよう。

まず、Kooletronキーボードに付属のUSB-C=USB-Aケーブルを介さず、M1 MacとUSB-Cケーブルで直接つなぐ。ネットの情報によると、ハブで変換してつないではうまくいかないそうだ。

AnkerのMac用多機能ハブ

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07RRWZHL6/


USB-Cケーブルでつなぐと電源が入ったので、キーボードがピンク色に光った。
(右上のダイヤルをプッシュすると、消灯・ゆっくりとした点滅・点灯となる。)

ソフトウェアのインストール

以下のpdfをダウンロード。

https://amazonfiles.s3.amazonaws.com/amagjp.pdf

その中に書かれているMac用のリンクから、amagのzipをダウンロード。

http://amazonfiles.s3.amazonaws.com/amag.app.zip

解凍の前に、待った!
そのまま解凍すると、のちに「amagが開けません」とエラーが出るので、それを回避するためにThe UnarchiverをApp Storeからインストールする。

The Unarchiver

The Unarchiver

  • MacPaw Inc.
  • ユーティリティ
  • 無料

apps.apple.com

The Unarchiverでamag.app.zipを解凍する。フォルダの中にamagや説明書pdfが展開される。

Homebrewのインストール

さて、一番手こずったHomebrewのインストールである。

Homebrewとは「パッケージマネージャー」とも呼ばれる、Mac OSにインストールできるソフトウェアの管理を行うソフトウェアである。
よく使われるものなので、Mac初心者の僕も名前だけは知っていた。

ところが、このHomebrewのインストール方法が、M1 Macだと違っているようなのだ。

以下順を追って説明する。
まず、Homebrewのサイトにアクセスする。

brew.sh

一番上のリンクをコピーし、ターミナルにペーストしてEnterを押す。

% /bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"

sudo権限が求められるので、パスワードを入力してEnter。

以下のメッセージが表示されるので、Enter。

Press RETURN/ENTER to continue or any other key to abort:

時間が少々かかり、インストールが完了する。パスを通す。

xxxにはMacのユーザー名を入れること。

% echo 'eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"' >> /Users/xxx/.zprofile % eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"

% eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"

homebrewのバージョンを確認してみて、以下のように出れば正常である。

% brew --version

Homebrew 3.4.7
Homebrew/homebrew-core (git revision 3d7b009f0c5; last commit 2022-04-23)

スクリーンショットを取り損ねたが、これでamagをダブルクリックすると「信頼できない発行元の~」と警告が出るので「開く」をクリックする。すると、無事M1 Macでもamagが現れる。

Mac版amag

さて、ひと休み。次はキーアサインをしなければ。


参考リンク

 

B型作業所雑感~いいところに入れた

私は今までに一般企業での就労経験が4回ある、精神障害者である。

具体的には躁うつ病気分障害)で、大学新卒で入社した会社で発病して退社、その後精神障害者手帳2級を1999年に交付されており、障害国民年金と厚生年金2級を受けて生活している。

それでも結婚できて、今週には17回目の結婚記念日を迎えたのだから、人生とはいろいろな意味で分からないものである。

企業の障害者雇用枠への再就職も年齢的に難しくなり、就労継続支援A型作業所*1すら面接で落ちたため、今は就労継続支援B型作業所*2に通っている。

最初に通ったのはもう20年以上前、B型云々とはまだ言わない頃だった。かまぼこ板を切り出した人型に絵を描き、台所や玄関のアクセサリーを作ったり、押し花はがきを作っていた。時給は100円。10時に集合して、当番制でカレーなど昼食を作ってみなで食べ、3時に解散。
人により病気はそれぞれで、人付き合いが面倒に感じたこともあった。でも、家にこもっているよりはマシだったと今にして思う。工賃は雀の涙だが、社会に1歩出るのにはよかったんだろう。かなり長い間通ったその作業所と、所長さんには感謝している。

先日まで在籍していたB型作業所は、アクセサリー作りが主な商品だったが、私はほぼひとりで映画の感想文を書いていた。
着手した頃にちょうど新型コロナの緊急事態宣言が発令され、在宅作業を余儀なくされた。だが、宣言が解除されてからも私は在宅を続けた。Amazon Prime Videoを見てWordで感想文を書き、作業所にメールを送ることで何の不自由もなかったからである。それと、知的障害者の歌声や騒ぎ声が気になって仕方がなかったというのも大きい。工賃は通いで430円/時(交通費自費)、在宅だと330円だった。
なかなか自分の感想文がネットに公開されなかったので(ココナラを考えていたらしいが、結局noteにしたらしい)、いい加減愛想が尽きて、先日辞めた。

今は、猫の殺処分を少しでも減らすことを目指して、猫カフェの立ち上げや猫のアクセサリー作りや猫ホテルや猫と子供達とのふれあいの場を作ったり、猫の葬儀を執り行うことを目指した新しいB型作業所に通っている。
毎日、ITパスポートの試験を受ける勉強をさせてもらったり、レジンのアクセサリー作りを手伝ったり、羊毛フェルトのアクセサリーを試したり、そんな作業の合間に猫のグルーミングや爪切りをやっている。
作業中に猫の可愛らしい鳴き声が聞こえたり、足元を歩いてくる猫を撫でてやるのはとても楽しい。
これで、時給900円である。交通費も出る。前の作業所を辞めてこちらの作業所へ通う時間を増やす方がいいのは明らかであろう。

今日は2ヶ月分の工賃を一度に受け取ることができて、ホクホクしている。
もちろん、一般企業での収入には遠く及ばないが、それでも年金生活者にとっては大金だ。
好きな映画を障害者割引で見たり、欲しいiPadを買おうかなと思っている。
あと、安物だが最近買った中古のバイオリンの練習もしたい。できれば楽器店のレッスンに通いたい(12,000円/月は厳しいが)。

めい(生後1ヶ月)

ナツキ(14歳)

ひな(16歳)、ナツキの母親

1万円の中古のバイオリンと8,000円の弓






*1:障害者への配慮もしながら、雇用契約を交わして自治体の最低賃金で9時~16時程度週5日ほど働く作業所。一般企業に近いかもしれない。

*2:雇用契約を結ばずに、1日2~4時間ほど作業をするところ。自動車部品の組み立てや食品を作ったり、内容はさまざまである。

わたしのドメイン(今週のお題)

今週のお題「わたしのドメイン

 

「お名前.com」を含め、複数のレジストラで複数のドメインを持っているが、まだ使っておらず、またこれから自分のネット上の名前をアピールしたいドメインが一つある。

 

「estwald.me」

 

.meドメインは本来モンテネグロの国別コードトップドメインであるが、英語の「私」に通じるので人気がある。

 

文章、日記、書評、映画の感想、絵…そういった自分を表現できる総合的なブログ、あるいはサイトにこのドメインを使いたい。2025年5月まで取ってある。

 

estwald.meの契約画面

 

映画「英国王のスピーチ」感想

  • 2010年、イギリス・オーストラリア
  • 監督:トム・フーパー
  • 主演:コリン・ファースジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーター、ガイ・ピアースデレク・ジャコビマイケル・ガンボンティモシー・スポール

  • あらすじ:
    20世紀初頭のイギリス。王ジョージ5世の次男ヨーク公は、幼い頃から吃音に悩んでいた。父王にスピーチを任されても失敗してばかり。妻エリザベスは、オーストラリア帰りの言語聴覚士ローグを夫に紹介する。王族と平民の格差を気にすることなく自分に接するローグに反発していたが、徐々に心を開き治療を受け入れていくヨーク公。だが、亡くなった父王の跡を継いだ兄エドワード8世が1年も経たずに王座から降りてしまったため、心ならずも「ジョージ6世」としてその後釜に就くこととなる。ナチス・ドイツの圧力が次第に強まる情勢下、国民の士気を高めるためのラジオ演説を、ジョージ6世は無事やり遂げることができるのか…。

  • 感想:
    この映画は史実に基づいた作品である。多くの人々が、自身が持つ欠点や障害に悩んでいる。ジョージ6世の場合はそれに加え、発明されたばかりのラジオで植民地を含むイギリス全土におのれの声を届けなければならない立場にあった。吃音の悩みは本当に深かっただろうと察する。特に、王たる務めをないがしろにして2回の離婚歴がある女性と本気で結婚しようとする兄王エドワード8世(イギリス国教会は離婚歴のある女性が王族と結婚することを認めていない)を諫めようとして吃音のため言い負かされてしまった時は、さぞかし悔しかったろうと思った。責任感が強い上に真面目なジョージ6世は、王位を継承した直後、妻エリザベスの前で「私は王ではない」と弱音を吐き、むせび泣く。エリザベスはそんな夫を優しく癒していた。
    そんな献身的なエリザベスが見つけてきた言語聴覚士のローグは、資格も免許もない、経験だけを頼りに数多くの患者を治療してきた風変わりな男。彼はジョージ6世と対等に接しようとし、当初は王の反発を買うが、独自のやり方で王の吃音を治す努力をし、1939年9月、ナチス・ドイツとの戦闘状態への突入を全イギリス国民に告げるラジオ放送の際にも、マイクを隔ててジョージ6世を支えるのであった。王は見事にやり遂げ、この映画は終わる。エンドクレジットによると、のちの戦争スピーチにおいてもローグは常に王に付いて支え、王はローグに「君主個人への奉仕によって授与される唯一の勲章」を与えている。そして生涯ふたりは良い友人であったという。
    吃音の治療として、下顎をぶるぶる動かしたり腹筋を使わせたり窓から大声を出させたりするのは大体想像がついたが、ローグのやり口はさらに、罵倒や卑猥な言葉を叫ばせたり、歌に合わせてしゃべらせたりとユニークだった。戴冠式のリハーサルで、ウエストミンスター寺院の王座にわざと座ってジョージ6世を怒らせて大声を出させるあたり、なかなか巧みだなと感じた。
    その戴冠式のニュース映画を一家で見ていて、ヒトラーの演説を「何を言ってるかは分からないがうまい」と言うジョージ6世。微笑ましくもヒヤッとするところである。なお、現イギリス女王エリザベス2世はジョージ6世の長女である。
    オリジナル音楽の他に、モーツァルトブラームスベートーヴェンの曲が流れるが、これらはロンドン交響楽団の演奏で、「さすがはイギリス、懐が深い」と思った。

    この作品は、第83回(2011年)アカデミー賞(作品賞・監督賞・主演男優賞・脚本賞)、第68回(2011年)ゴールデングローブ賞(最優秀主演男優賞)、第35回(2012年)日本アカデミー賞(外国作品賞)を受賞した。

    www.youtube.com